超短編『住処』

カナタの部屋の箪笥に住んでいる小さな龍は、昔、広大な沼地を棲家にしていた龍のひ孫だ。
気に食わないことがあると、すぐ部屋の窓が結露する。
沼地のヌシだった彼の曾祖父は、雨雲を呼び、沼を氾濫させたりしていたらしい。
箪笥の龍は、カナタが祖母から貰った風呂敷を箪笥にしまっておいたら、何時の間にか住み着いていたのだ。
だからカナタは、箪笥が一段使えなくなってしまった。
天気予報は外れたことがないので重宝している。