2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

超短編『夜明け』

街角で、くしゃみひとつ。 猫のあくび。大きな提灯。人並みはなく、鳩の群れ。 路端から起き出すヒト。 仲見世のシャッターを端から順にバタバタ鳴らして吹き抜ける風。 交差点の信号は、車もないのに律儀に赤から青へ。 道の真ん中に、すとんと降り立つカラ…

超短編『参道の家』

窓の外。 誰かが、ふう、と息を吐く。 気がつくと秋になっていて、じゃあ夏はいつの間にどこへいったのかなあ。 男の子と女の子が、そんな話をしている。 半分葉の枯れた木の枝の間に隠された小箱を開けると、金木犀の花が詰まっていた。

短編『毛布 -夜明け前-』

これはキミヤさんがうちに来てふた月ほど経った頃の話。 キミヤさんが風邪をひいたので、普段は鬱陶しいと放っておかれている毛布を出してきた。 そんなものにくるまるなんてと言うから、嫌いなのかと思っていたのだけれど、どうやらそうではないらしい。 少…