2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

超短編『言葉遊び』

無と戯れ、有と遊ぶ。 世、ほどなくして幻灯のまなざし。 戯れる相手はおらず、しとしとしと、しんと絡まる。 遊び相手に不足はなく、けれども彼の言うことにケレン無しとて。 よほどなくして、厳冬のまなざし。 無は無であればこそ、なにもなし。

超短編『高速まばたき』

因果のない世界でまばたきひとつ。 因果がないから空気抵抗がない、というわけでもないのに、やけに高速。 高速まばたき。

超短編『何の音だ』

浦島太郎は、つとめて気にしないようにしていた。 文庫本ほどの大きさの小さな箱は、一昨日、彼女からプレゼントされたもので、一昼夜騒ぎ明かした竜宮城で家に帰ると申し出ると、うやうやしく手渡されたものだった。来た時と同じように、浜辺で子供たちにつ…

超短編『隙間』

朝の通勤電車に乗り込む時、何気なく足下に目をやると、ホームと電車の隙間が広く開いている。 その隙間の開いているところに、ぴったりと人の顔が上を向いて、はまっている。 あまりにも現実感のある顔だったので、一瞬、本当に誰かがうっかり落ちて、はま…