2008-01-01から1年間の記事一覧

西荻ブックマーク『超短編の世界』オフレポ2

ああ、なんだかだんだん忘れてきたぞ…いい加減イベント後の打ち上げの話題へ。 イベントの打ち上げなのに、普通にお客さんも混ぜてくれるのが、西荻ブックマークの素敵なところ。 打ち上げ会場までは、五十嵐彪太さんと山下昇平さん、途中参加の峯岸さんが引…

西荻ブックマーク『超短編の世界』オフレポ1

銀座のランチオフ、別名「七人の侍もしくは七人岬」に、いきなり地元で渋滞に巻き込まれて、まさかの遅刻。 先に始めて下さいとメールをしたら、皆さん待っていて下さり、大変すみませんでした。 問題の七人は、金子みづはさん、仲町六絵さん、侘助さん、加…

オフレポまであと一日か二日

昨日のオフレポを書こうと思いますが、今日はもう、よく働き満員電車にもまれて先ほど帰宅したところですので、もはやままならぬのです。 行きの電車の中で、ぽちぽちとmixiにアップしていましたが、帰宅する前に携帯電話の電池を使い切りましたよ。…なんと…

西荻ブックマーク『超短編の世界』

14日の銀座ランチオフに参加することにしました。 金子さんよろしくお願いします。って、こんなとこでぶつぶつ言っても仕方がないんだけれども。 まだ一度もお会いした事のない仲町さんは、週刊てのひら怪談で、同じページに一緒に掲載されたご縁があるので…

短編『花めぐりの男』

雲の流れは早い。その波に、月が浮き沈みしている。 うっすらと明るくなり始めた空に、夜の残り香と目覚めそうな朝の気配とが不明確に混ざりあっている。 真夏の早朝、朝顔さえまだ開いていない。 気の早い蜩が、カナカナと鳴いている。 花めぐりの男に出会…

超短編『豊穣の国』

遠い西の国に、夕焼けを追いかける日があるのだという。 秋の特別な一日。 黄昏を知らせる鐘を合図に丘を駆け上がり、まっすぐに西へ西へ。 その勢いに、金木犀の花が舞い散っても止まらずに。 西へ西へ。 やがて景色はひらけて、空をぐるりと見渡せる場所へ…

超短編『黒い羊』

羊のやつは、今日も黒い顔を窓枠に乗せている。ビロードのような瞳はしんと深い夜の色。顔や手足だけでなく、もこもこの毛まで黒い。羊は笑わない。部屋の中には青ざめた水の匂い。羊の目に映った空は暗い色。その丸い空を見る。丸い空に鳥が泳いでいる。羊…

超短編『その他大勢』

その他大勢でいれば、とりあえずは安全なはずだ。当事者ではなく、傍観者なのだから。 そう思って、カーニバルの中へ紛れ込む。カーニバルを楽しんでいる、そんな顔で歩く。 後ろを振り返ったりはしない。人込みは、川のように流れている。ゆっくりゆっくり…

『いつか橋の上で』より

「ほらあの『共同募金』てやつ。募金すると色のついた羽根をくれるじゃないですか。赤とか」 「緑とかな」 と僕が言うと、津田は我が意を得たりというように大きく二度頷く。津田は真っ赤なセーターを着ていた。 「私が言いたいのは、あの羽根はなんなのかっ…

『その他の物語』

船のゴミ捨て場はひどい有様で、それでも、無機物しか捨てられていないのが救いだった。 螺子とか、よく分からない鉄屑なんかがごちゃごちゃと放り込まれている。 客なのか、中年のよく肥えた夫人が、無造作に紙袋を放り捨てるのに出くわした。紙袋は全部で…

超短編『振動』

駅でホームへ続くエスカレータに乗る。ホームが高い位置にあるので、妙に長い。 エスカレータを歩くのは感心しないが、かといってそれを咎める気概もないので、左側へ寄って右側をあけている。 半ばまで進んだあたりで、誰かが段を踏み締めて上がってくる。 …

アフター未来百怪の世界

20日峯岸氏の主催で『未来百怪の世界』という超短編関係者のオフ会がありまして、京都に行けなかった悔しさをバネ(?)に参加して参りました。 オフ会に参加すること自体ほとんど皆無に等しいのですが、愉快な席でございました。 また機会があったら、どこ…

超短編『トコロテン』

きしり、と背後で網戸が鳴った。気温は下がる気配もない。窓を開け放ち、少しでも風を入れようとカーテンも開け放っていたがあまり意味がなかった。 きしり、きし。また網戸が鳴る。そういえば、先程まで喧しかった蝉の音が止んでいる。すうっと一陣、ひんや…

超短編『掬う』

早朝、蓮を見に行くと、蓮に混じって手が咲いている。 誰か水中に沈んでいるのかと思ったが、目の前を通ったおばさんが、あら綺麗な花。などと言って写真まで撮っているからには花なのだろう。 手に見えているのは自分だけなのだろうか。 翌日見に行くと、隣…

超短編『やいこちゃん』

友達のもちだやいこちゃんは、牛をたくさん飼っているお家の子です。 畑がたくさんある中に、牛がいる広い場所があって、そこは太い針金で柵がしてあります。 針金には牛が逃げないように、ちょっぴり電気を流しているんだよ。そう言って、やいこちゃんは、…

超短編『顔』

マンションの外廊下を歩いていると、一軒の部屋の窓に誰かが内側から顔を張り付けていた。曇りガラスだが、よほど顔を密着させているのか、目鼻立ちまでしっかり見分けられるほどだ。 部屋に電気はついていない。顔の左右には掌も張り付いている。 ほんの一…

お知らせ『超短編の世界』発売

内容紹介 わずか数百文字で綴られた、さまざまな「恐怖」のカタチ。 『お見世出し』で、日本ホラー小説大賞・短編賞を受賞した森山 東をはじめ、松本楽志、たなかなつみ、赤井都、タカスギシンタロ、峯岸可弥など、手練の書き手が集いました。 「カラダ」「…

超短編『梅雨』

梅雨の合間の、ひととき雨のあがった朝だった。湿度が高くて、気温は少し低い。快適とは言いがたい一日の始まりだ。 濡れた傘を干しておくと、近所に住んでいるトカゲがいつの間にか傘の上にいる。 風が吹いて、傘がぐるりと転がって、あわてて助けに駆けつ…

超短編『後ろの席』

映画を観に行った。 公開前から楽しみにしていた映画で、アクションシーンに息をのみ、謎を解くシーンに身を乗り出し、時折のぞくコミカルなシーンに笑いをこぼし、すっかり夢中になった。 いよいよのクライマックス、というところで座席にドン、と振動。 僅…

訃報

てのひら作家、峯野嵐さんのご冥福をお祈り致します。

超短編『山海』

本を積む。 本棚に収まりきらなくなった本を積む。どんどん積む。 そんな調子で毎日のように本が増える。まだまだ積む。 この高さくらいならば崩れまい。大きさもだいたい揃っている。 そう思った頃合には必ず小鬼が現れて、もっともバランスの悪そうな山の…

超短編『カリンバ』

午睡から覚める。家人はみなそれぞれに出かけてしまい、自分以外は誰もおらぬ。 薄ぼんやりとした頭で、意味もなくうっそりと辺りを眺めやる。 腰掛けの上に載せた小さなカリンバの穴から、小指ほどの何かが覗いている。 見れば肌の黒い、人の形をしている。…

超短編『川面から』

昼下がり。水鳥が、水面に着水する様を飽きずに眺めていた。 近所にある、広すぎず狭すぎない幅の川だ。 水質は、あまり良いとは言えないが、最悪の時に比べるとかなり良くなったとも言える。 カルガモが最もよく見かける水鳥で、他にもコガモやマガモ、シラ…

超短編『夜の闇の内側』

暗闇で目が覚めた。 時間の感覚がないまま、慣れた感触の掛け布団の手触りだけがやけに明確に感じられる。 それにしても、何故こんなに暗いのだろう。普段なら固定電話の小さな緑色のランプが見えるはずだ。停電しているのだろうか。それとも、寝相が悪くて…

超短編『暗い』

探されているけれど、どこにもいないのは知っていた。 ここにいるけれど、最早どこにもいない。 自分の足が見える。 手も。 お前の旋毛はこんなに後ろにある。 旋毛を押すとどうなるんだっけ。 「やめろよ」 僕が言うと、兄は肩先に静まり返った。 ずっとぶ…

超短編『愛情』

散歩中、言われました。 「わわわんとしていなさいよ」 意味が分かりませんでしたので、立ち止まって振り返り、よくよく顔を見ました。 「わわわんと、していなさい」 「わわわんと」 言われたように返事をしたつもりでしたが、なんだか切なげな、鳴き声みた…

超短編『どすん』

どすん、といえば何か重い物が地面などに落ちて来た時の音ということになっている。 その音が、唐突に頭上で聞こえた。 咄嗟に身を屈めてみる。音が聞こえた時点ですでに落ちているのだからどうしようもないはずなのだが、音のわりに何の衝撃もない。 なんだ…

超短編『煤』

ある怪談の本を読んでいると、いつの間にか本を持っていた両手が真っ黒になっている。 びっくりして良く見れば、煤けている。 手を洗いに洗面所へ行き、水道の蛇口をひねろうと手を伸ばして、また驚いた。 煤などどこにもない。本のインクの汚れすらない。 …

超短編『夜の川』

夜の空気も大分、春らしくなり、刺すような冷たさはない。 仕事を終えて、家までの道を辿る。 橋を渡る。夜の川は、黒く、どろりとしている。 上流から何か白い物が流れて来るのが見えた。 タオルか何かだろう。と、見当をつけて眺めていると、真っ白い、非…

超短編『腕枕』

鎌倉から帰るため、Kは恋人と一緒に電車に乗って、七人がけの座席に並んで座った。一番端に恋人が、その隣にKが並ぶ形だ。 車内は空いていて、はじめこそ二人で、今日巡った場所や、他愛のない話題で盛り上がっていたが、じきに心地良い揺れと歩き回った疲れ…