超短編『その他大勢』

その他大勢でいれば、とりあえずは安全なはずだ。当事者ではなく、傍観者なのだから。
そう思って、カーニバルの中へ紛れ込む。カーニバルを楽しんでいる、そんな顔で歩く。
後ろを振り返ったりはしない。人込みは、川のように流れている。ゆっくりゆっくりと。
焦燥で背中がじりじりするが、こんなことではいけない。
通りすがりの屋台でフランクフルトを買ってみる。いよいよ、その他大勢らしくなってきた。
何食わぬ顔でフランクフルトを食う。なんて平凡で、ありきたりな光景だろう。完璧だ。
どうせだから、風船も買う。ソフトクリームも食う。みんながかぶっている三角の帽子もかぶる。