2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

超短編『無・夢・霧』

嗤うのは風の琴車。 コトコトコトリ、聞こえるのはそれだけ。 誰もいないのに気配だけはたくさんあって、そしてそっと誰かが嗤う。

超短編『四の葉』

閃々と心を打つものの確かさ。 その確かさの持つ不確かさを白詰草の野の原に敷き詰めてゆくと、時折四葉の姿に成るので。 やんわりと四葉を摘み取る誰かの手の先。 その向こうの微笑こそ、心打つものの確かさでしょうか。

超短編『不在』

誰もどこにも居ないので、世界の裏側は落ち着かない。 たぶん、この風でみんな飛ばされちまったに違いない。

超短編『雨』

前触れもなく雨粒が一斉に地上を叩き、何をする間もなく容赦なく満遍なく水浸しになった。 雨が激しくあらゆるものを打ち付ける音以外には何も聞こえず、後ろから追い越して行った小学生のランドセルは、蓋がきちんとしまっていなくてバタバタ暴れていた。

超短編『夜の闇の中』

暖かい季節になったので、深夜、コーヒーを片手にふらりと部屋を出て、そのまま勢い余って散歩に出掛けた。 温い空気。太陽は地球の裏側に。極めて自己中心的な表現に自分で苦笑い。 星の光は弱く、自己中心的な僕の周囲には闇。幻想は夜の闇の中に溶けてい…

短編『路地』

「この先の道で、ひとが捩じれて捩じれてツイストパンより捩じれて倒れていたってさ、なあ」 知らない痩せた男が、わるわると話しかけてくるので急いでその場を去る。何故知らない人間に話しかけたがるんだろうかと訝る。 角を曲がると太った婦人がやけに小…

超短編『這い回る蝶々』(500文字の心臓参加作品)

小さくてんてんてん、蜜の痕。 指で辿るとべたべた繋がるのが愉快で、お父様ともお母様ともお兄様ともはぐれてしまったのに、もうずっとずっと蜜の痕を追いかけている。 おなかがすいたら手についた蜜をなめて、ぺたぺた蟻のように這い回る。 頭には、お兄様…