超短編『愛情』

 散歩中、言われました。
「わわわんとしていなさいよ」
 意味が分かりませんでしたので、立ち止まって振り返り、よくよく顔を見ました。
「わわわんと、していなさい」
「わわわんと」
 言われたように返事をしたつもりでしたが、なんだか切なげな、鳴き声みたいになってしまいました。
 それでも、満足そうに笑って頷いてくれたので、いくらかほっとしたのですが。
 やはり、お母さんの言うことは時々理解に苦しむのです。
 僕が、犬だからなのかも知れません。