超短編『カリンバ』

 午睡から覚める。家人はみなそれぞれに出かけてしまい、自分以外は誰もおらぬ。
 薄ぼんやりとした頭で、意味もなくうっそりと辺りを眺めやる。
 腰掛けの上に載せた小さなカリンバの穴から、小指ほどの何かが覗いている。
 見れば肌の黒い、人の形をしている。
 ああ、留守番か。ご苦労。
 口から思いがけぬ言葉が出る。
 カリンバの穴から覗いていた小さな人は、慌てて穴の中に引っ込んだ。
 慌てすぎて縁に頭をぶつけたのか、ほわんとした頼りない和音が一瞬鳴った。