超短編『山海』
本を積む。
本棚に収まりきらなくなった本を積む。どんどん積む。
そんな調子で毎日のように本が増える。まだまだ積む。
この高さくらいならば崩れまい。大きさもだいたい揃っている。
そう思った頃合には必ず小鬼が現れて、もっともバランスの悪そうな山の上で踊る。
両手を上げて、足を交互に上げて、ひゃあひゃあと愉快そうに踊る。
始めたところで払いのければ良いのだが、毎回必ずその踊りに気を取られて払いのけるのを忘れてしまう。
すると本が崩れる。みな崩れる。
小鬼はもろともに本の海に飲まれてしまう。
愉快なのか腹立たしいのか決めかねて、また積み直す。