超短編『川面から』

 昼下がり。水鳥が、水面に着水する様を飽きずに眺めていた。
 近所にある、広すぎず狭すぎない幅の川だ。
 水質は、あまり良いとは言えないが、最悪の時に比べるとかなり良くなったとも言える。
 カルガモが最もよく見かける水鳥で、他にもコガモマガモ、シラサギなどが思い思いにやって来てはまたどこかへ飛んでいく。
 川面に足をつけ、滑り込んでくる時にたつ水しぶきを眺めるのは飽きない。
 着水する時の水音も、涼やかで小気味良い。
 そうやってだんだん日が暮れてきて、そろそろ水鳥たちもどこかへ引き上げようと、一羽去り、二羽去りだんだん減って行く。
 最後の水鳥が、川面を蹴って空中に舞い上がった。
 その一羽を見送って、さて、帰ろうかと思った時だった。
 川面に、一筋の波が立つ。
 魚か亀かと目を凝らした。
 しかし、それはまるで鳥が着水する時の水しぶきそのもので、川面をさあっと斜めに切り取り、波紋を立て、やがてもとの川面に戻って流れていく。
 そのままじっと、目を凝らしていたが、それきりだった。
 カラスが鳴きながら、ねぐらへ向かって飛んで行く。
 その遠ざかる姿を見ながら、家路につく。