2008-03-09 超短編『夜の川』 夜の空気も大分、春らしくなり、刺すような冷たさはない。 仕事を終えて、家までの道を辿る。 橋を渡る。夜の川は、黒く、どろりとしている。 上流から何か白い物が流れて来るのが見えた。 タオルか何かだろう。と、見当をつけて眺めていると、真っ白い、非常に整った顔立ちの女の人が、川面を滑るように流れて行く。 誰かが流されている、助けなくては。とは、とても思えなかった。 あまりにも真っ白で、平面的だったからだ。 女の人は、そのまま川下に、滑らかに流れて見えなくなった。