超短編『宝探し』

「ねえ、ママ。おじいちゃんのお葬式が終わったあとで、みんなでお食事をしたでしょう。あのお店に大きなソファがあってね、寄りかかるところと座るところの間にね、いろいろなものが挟まってたの。ライターとか、百円玉とか、つまようじとか」
 居間のソファの上で、今年小学校に入学したばかりのミカが母親に言う。
 目の前には、おやつのショートケーキ。真っ赤な苺が乗っている。
「お食事しないでそんなことしてたの?」
 母親はのんびりとコーヒーを飲み込んで聞き返した。
「だって、ごはんあんまり好きなのがなかったんだもん。おじちゃんとかおばちゃんとかみんなお酒飲んだりしてつまんないんだもん」
「そうねえ」
「だから、健太くんと二人でソファで宝探ししてたの。どっちがたくさん見つけられるか競争したんだよ。見えないから、手を入れてつかんだものを、どんどんテーブルに並べてね」
 言いながら、ミカは上着やスカートのポケットに手を入れる。
「健太くんが見つけたのは、折り鶴と、小さい鍵と、ビー玉と、銀杏」
 それを次々とポケットから取り出して、テーブルへ並べて行く。
「健太くん、自分が見つけたのをミカにくれたの?」
「ううん、交換したの。わたしが見つけたのは、一円玉と、飴玉と、ボールペンと、おじいちゃんの指」