超短編『花』

花が散りますねと声をかけられたのでそうですねと答えた。
花は確かに散っていた。
花弁は地に落ち、あるいは風に舞い。


花の季節にいつもお見かけしますと言うので、その通り、
花咲く折りには必ずお邪魔しておりますと答えた。
花を思わせる娘はあでやかに微笑むと言った。
花は次の春にもきっと咲かせましょう。


花の吹雪が地を立ち上がり、
花びらは、はらはらと地に落ちる。


花は静かに散っていた。