超短編『ドライブ』

何年か前の夏に、夜、友人の運転する車でドライブに行ったんだ。
広い田舎道でね、見えるものは、畑とか原っぱとか、そんなのばかりだった。
広い土地で、空がとても高くてね、窓を全部開けてさ、気持ち良かったな。
月の明るい夜でね、のどかな風景にすっかり気を許していた。
他に走っている車もないし、もちろん誰かが歩いているはずもない。
聞こえてくるのは、車のエンジンの音と風の音、あとは虫の鳴き声くらいだった。
しばらくそうやって走っていた。道はまっすぐで、迷いようもない。
そろそろ引き返そうかなんて話をしていたら、急に運転していた友人が、驚いた顔をするんだ。
どうしたのかと思って、前を見ようとしたら友人がブレーキをかけた。
どうしたんだよと尋ねたら、友人はフロントガラスから目を逸らしながら、前を指差すんだ。
そちらを見たら、友人と同じように思わず目を逸らしたくなった。
たくさん顔があって、じっと立ち尽くしたままこっちを見ているように見えたんだ。怖いというか、ぞっとしたな。

よく見るとそこにはさ、何十本ものひまわりがみんなこっちを向いて咲いていた。
ひまわり畑だったんだ。
大きなひまわりでね。
次の日の昼間見に行ったら陽気な眺めだったんだけどね。

そう言って伯父さんは、懐かしそうに目を細めた。