超短編『携帯電話』

今朝、買って間もない携帯電話を思い切り踏み付けてしまった。
まず、二つ折りであることが基本だった。二つ折りのものが好きなのだ。
それからデザインや色、値段、様々な機能、手に持った時の操作性、重さに至るまで、とにかく比べて選びに選んで決めた携帯電話だ。
使い心地の良い納得の機種だった。
それなのに不可抗力とはいえ情けも容赦もなく全体重をかけてしまった。
体重は特別重いわけではない。身長から導き出された結果によれば標準的だ。

携帯電話は「ぐえ」と蛙がつぶれたような音を出した。
足はどけたのだが、どうしても、携帯電話を拾って開いて見る勇気が湧かない。