超短編『鳴き雀』

 チィチィという少し甲高い鳥の声がしつこくしていて僕は目を覚ました。
 見ると、眠る時はベッドの上、僕の頭の下にあった枕が壁際に落ちていた。
 その壁と枕の間にどこから入ったのか雀が挟まっていて、それが鳴いていたのだ。
 こんな妙なところに挟まるくらいだから、少しのろまな奴なのかも知れない。僕が枕をどかしてやっても、雀はそこを動かない。怪我でもしているのだろうか。何か言いたげな目でこちらを見ているような気がした。
 ふと、窓辺に置いてある植木鉢を見ているのだと気がついた。二つ並んだ右側の植木鉢の受け皿には水がたまっている。
 皿を外して雀に近づけると、おいしそうに飲み始めた。ずっと鳴いていて喉が渇いていたのだろう。皿の底には鉢から流れた土が少し沈んでいる。もうひとつの鉢の受け皿を外すと、こちらはきれいな水だったので、その皿も雀に近づける。
 すると突然雀が飛び上がって皿の中へ飛び込んでしまった。水浴びをしているのだ。飛沫が顔に飛んでくるので思わず目を閉じる。
 寝ぼけた頭で、でもまてよと思った。
 今、雀が急に小さくなったような気がする。もう一度皿を覗き込むと、雀はどんどん小さくなって消えてしまった。