超短編『悪夢』

悪夢散々である。
まず、熊に追いかけられた。目が覚めたと思ったら、大量のオレンジと一緒に出荷されそうになった。目が覚めたと思ったら、よく分からない白い靄に襲われそうになり逃げ惑った。目が覚めたと思ったら、呪いのビデオの少女に捕まりかけた。目が覚めたと思ったら、大量の水で溺れそうになった。目が覚めたと思ったら、たくさんの鳩にたかられた。目が覚めたと思ったら、電車にひかれそうになった。目が覚めたと思ったら、飛行機の翼に乗って空を飛び見事に足を踏み外した。目が覚めたと思ったら、蓋の開いていたマンホールに落ちた。目が覚めたと思ったら…いや、今度こそ目が覚めたはずだ。
けれど、今、僕の目の前には包丁を持った女が立っている。