短編『植える』

ちぎる。ちぎるとまた生えてくる。ちぎる。
「どうなってるんだ、これは。おいおい、ほら、これ見てみろよ。」
一昨日、ぼくが植えた魚肉ソーセージを、全然知らない酔っぱらいのおじさんがちぎる。
ああ、それ、ぼくの大好物なんだよ。おじさん。
「ああ、これ、君のなんだなあ。すまなかったなあ。お詫びにこれ、あげるから」
おじさんはそう言って、折り詰めのお寿司をくれた。
これ、おうちにお土産じゃないの?じゃあ、明後日寄ってくれたら分けてあげるからおじさん忘れないでね。
「そうかい、うんうん。ぼうず、良い子だな」
おじさんはふらふらしながら行ってしまった。ちゃんと覚えているといいけれど。
ぼくは、新しい大きな植木鉢に、折り詰めのお寿司を植える。