超短編『記憶』

まず自分にぴったりの数を探す。7とか262とか89753281とか。なんでもいい。好きな数。
多いからいいとか少ないから悪いとか、そういうのは一切ないから迷わなくて良い。
決めたら、くるりとその数に合わせて自分が回る。
そうしたら色を選ぶ。青なら青。
色は不確定だから、それっきりでいい。後で変わることもある。
数と色が決まったら、形を選ぶ。別にどんな形でも良い。
丸みのあるやつでも、角張ったやつでも多角形でも円でも。
それも決まったら、選んだ形に色を塗って。
それでおしまい。ここでやるべき事はすべて終わった。
さて、それじゃあ塗り終わった者は順次出発。いいかね、投げるよ。
ちゃんとそれぞれの母親に着地するから心配する必要はない。


僕の声が録音されたレコーダから聞こえるのは、紛れもなく僕自身の声。
けれど、精神科医はこう言った。
逆行催眠をかけて、0歳まで遡った。試しに母の胎内に居た頃まで遡ったら、こんなことを話したのだそうだ。