超短編『左手から』

 左手と決別してからほどなく一年。北の小さな島に住む左手から、便りがあった。
 ここはなにもかも理想の通りのところで、左手のわたしだけがこんなに幸せなのは少し寂しい。
 そんな一言が、一面氷に覆われた海の絵葉書の片隅に、ぎくしゃくとした文字で綴られていた。