超短編『藁祭り』

 藁祭りの間中、いちいちと藁束を叩き付けてざんざん鳴らし、辺りには藁屑が舞い散っている。
 誰も彼もがそうするので、空気はどこも藁の匂いで満ちている。
 藁の匂いというのは別段嗅いだこともないものだったが、稲刈りの後でずっと日に当てているものだから、これが日向の匂いであろうと見当する。
 それにしてもこの熱狂の様は、なんということだろう。
 藁を手にしていない者はなく、藁を持たない自分がまるで馬鹿のようだ。
 藁屑が鼻腔を刺激して、大いに嚔をすると、目の前の藁屑が盛大に収束して遥か山向こうへ飛んで行ったようだった。