超短編『小石』

 かつて、鳥撃ちの猟師だった祖父から、鴨鍋の話をよく聞かされた。
 自分で撃った鴨を捌いて鴨鍋を作ったそうだ。散弾銃で撃つから、稀に小さな鉛の弾が取り切れずに残っていて、鴨肉を噛み締めた時にガリッと噛んでしまうことがあったという。
 もう随分昔に聞いた話だったが、ふいに口の中でガリッという歯応えがしたので思い出したのだった。
 食べていたのは鴨鍋ではなくて、パイナップルだった。
 歯に衝撃をもたらしたものが何だったのか吐き出してみると小さな丸い小石で、その形はまるで祖父の話にあった散弾銃の弾のようだった。
 まさかなと独り呟き、二切れ目のパイナップルを食べると、口の中でガリッ。
 またかと口から出してみたら、先ほどと同じくらいの大きさの小石だった。
 一体なんでパイナップルから小石が出てくるのか。その時はそう思っていたのだが、何も食べていなくても、口の中に突然小石が現われるようになった。
 石の形や大きさはいろいろで、小さくすべすべしているものもあれば、親指の先くらいのごつごつしたものもあった。
 その度に、石を吐き出さなければならないし、石が口に出現する感触がどうにも気持ち悪いので未だに慣れない。
 最近は恋人が、形の良い石をきれいに洗って集めていて、気に入らない石は庭へ放っている。
 庭にはすっかり小石が敷き詰められ、相変わらず口の中には小石が出現し続けている。