超短編『静けさの奥』
熱が出た夜は、眠ると必ず同じ夢を見た。
夢とも、幻覚ともつかぬようなものだ。
暗くて、狭くて、ぐにゃりと長い場所を、いつまでもいつまでも通り抜けていく。
どこかに出る前に、必ず目が覚めた。
目が覚めると、しんと静まり返った暗い部屋。
天井が、うねる。音もなく、いつまでもうねる。
それをじっと見つめていると、音のないその奥の音が、ぃぃぃぃぃぃぃん、と聞こえてくる。
たぶん、自分の内側で鳴っている、その音を聞きながら、眠りに落ちればまたあの夢に帰る。