超短編『風の日』

風乗りの老婆に会った。
アタシも昔は若い娘だったんだよと言いながらやって来た。
綺麗だったかどうかはご想像にお任せさね。と言う頃には、遙か彼方へ移動している。
ああ、もうじき春だから風が強いのだなと思う。
若い娘の風乗りにも会えないものだろうかと立ち止まって風の吹く方を向いてみたが、目に砂埃が入っただけだった。