超短編『いじわる』

 君がよく笑っているのは、笑っている間は口をきかなくてもすむからだよね。
 そんなに笑っていると、犬草の種が飛んで来て、君の開いた口の中で発芽して、その艶かしい舌に根付いて、そして、そしてね。
 そこまで話すと、君は笑うのをやめた。
 そして、鞄から大きな大きな、顔が半分以上も隠れる白いマスクを取り出して。
 それきり、笑う顔も見えない。