2009-12-08 超短編『犬』 犬の幽霊に出会ったので、連れ帰って一緒に暮らすことにした。 犬は、吠えもせず、食べもせず。なにしろ幽霊だから。 犬小屋はあるけれど、首輪も綱もつけられない。だって、幽霊だから。 繋がる場所がないので、幽かに明滅しているばかり。 淡い光なので、まるで蛍のようでもある。 美しい雲が流れて行くのを、見ているのだろうか。 雲など、見られるのだろうか。 もしも近くに、世界がなくても。愛がなくても。 日はまた昇るに違いないと信じているのだろう。 犬は、今日も庭に佇んでいる。尾も振らずに。